有限会社ケイズファクトリー

代表取締役社長   鴻野 正好

丈夫で永く愛される革製品のファンを増やし「ワイルドスワンズ」ブランドを世界に発信する躍進企業

革製品の愛好者は世界中にたくさんいますが、作り手それぞれのものづくり哲学を反映したブランド品が次々と世に送り出されています。今回は革製品のブランドを一から立ち上げ、お客さまに商品を永く使っていただけるものづくりにこだわって、オリジナルブランドのファンを飛躍的に増やしてきた企業を紹介します。革製品の製造販売体制を構築し、直営店を持つ強みを活かしてユーザーのニーズを的確に汲み取りながら、地域の活性化にも貢献して躍進する有限会社ケイズファクトリー(本社:茨城県稲敷郡河内町)の鴻野社長に、会社の設立経緯、事業内容、特色、今後の展望についてお聞きしました。

聞き手 弊社社長 鈴木祥順

  • 取材は平成29年6月8日に行われました。(6月29日、鈴木祥順が社長退任し、茅根務が新社長に就任しました。)

親の廃業後の工場を利用して兄弟で革製品製造業を始める。オリジナル商品の開発に取り組み、ブランドを立ち上げる。

会社の創業・設立の経緯についてお聞かせください。

鴻野
両親が事業を廃業後休眠会社にしていた鉄工所のスペースを利用し、平成6年に革製品の製造業を兄弟で始めました。
私たち兄弟は、昔から独立指向が強く、革製品を作り始めたきっかけは、もともと好きだったこともありますが、財布や手帳などを見て、自分たちでも作れるのではないかと思ったからです。
当時は素人の浅はかさだったかもしれませんが、ミシンを1台購入して、製作活動をスタートしました。何処かで修業してきたとか、何処かの会社で働いて技術を学んできたということは一切ありません。それが逆に今となれば、私たちの強みになっています。どうやったら丈夫にできるのか、どうやったら綺麗に見えるのか、自分たちで試行錯誤しながら製作しました。それが私たちなりのオリジナリティとなり、ユーザーに評価いだけるようになったのではないか、と考えています。現在、私が営業を含めた会社全般、弟(鴻野弘好)が製造責任者のアトリエ長を担当しております。

革製品づくりはすぐに軌道に乗りましたか。事業が軌道に乗るまで、ご苦労はなかったのでしょうか。

鴻野
私は4年半、今の仕事を始めるまでオリジナル雑貨の企画・製造・販売会社で働いていました。退職し独立開業するにあたり、その会社からOEM生産のご依頼をいただくことができました。それによって、オリジナル製作に必要な道具類を少しずつ揃えていくことができました。
オリジナルブランドである「ワイルドスワンズ」を発表するまでには、4年という長い時間を要しました。先の会社を含め複数の会社からOEM生産のご依頼をいただけたことにより、資金のやりくりができました。

ブランド名と会社名は共に名字に由来。独学で財布の試作品づくりを始める。

御社のブランドである「ワイルドスワンズ」の名前の由来、「ケイズファクトリー」という会社名の由来についてお聞かせください。

鴻野 正好社長
鴻野
私どもの名字である「鴻野」の「鴻」という字は野生の白鳥を表しますが、英訳では「ワイルドスワンズ」になります。それをそのままブランド名にしました。
また、「ケイズファクトリー」は、父がやっていた会社の「鴻野製作所」から来ています。

革製品の製作は、最初はやはりお財布など小物製品から始められたのでしょうか。

鴻野
最初は財布からスタートし、革小物全般、そして鞄やベルト等、多岐に渡り製作するようになりました。時には革製品製作関連の書籍を参考にしながら試行錯誤し、丈夫で永く使えるようなものを目指しました。それによって我々の製品の大きな特徴が出来ていきました。

ブランド立ち上げにより雑誌に取り上げられる。飛躍の大きなきっかけは直営店オープン以降。

いろいろな情報誌への「ワイルドスワンズ」ブランドの紹介を含め、飛躍の大きなきっかけとなった出来事についてお聞かせください。

鴻野
最初に私たちの製品を雑誌に取り上げていただいたことはもちろん大きかったと思います。世の中に私たちの製品を広く認めていただけるきっかけになりました。ある雑誌では、5ページにわたる記事を掲載していただきました。編集の方が河内町までお越しくださり、製作の細やかなところまで取材していただきました。これらによってブランドの認知度は着実に広がっていったと思います。
それから、「ワイルドスワンズ」という私たちのブランドが飛躍的に認知されるようになったのは直営店のオープンだったと思います。
平成20年に最初の直営店である銀座店をオープンしました。6坪程の小さなお店なのですが、それまでの情報発信と比べ、お客さまへの商品の訴求力は大幅に高まったと思います。お客さまと直接お話をすることで、製品の特徴をしっかり説明できるようになったことが大きかったのではないでしょうか。しばらくすると売上は順調に推移するようになり、平成24年には西の拠点として、京都に2号店をオープンすることができました。

革製作の一貫生産と直売に強み。当社独自のものづくりに共鳴し、全国から若い職人が集まる。

製品づくりにおいて、革の材料仕入れと革製品の製作はどのような流れで進められているのでしょうか。

鴻野
革製品の製作を始めた当初は、一般の方が趣味で材料を調達するようなお店から仕入れをしていました。その後、日本国内の革材料メーカーからの仕入と並行して、商社を通じ海外のインポートの革を仕入れるようになりました。現在は、自分たちが海外に行って、革を作っている業者と直接交渉して、直輸入することもあります。
製作は、革を仕入れた後、自分たちで革の裁断から最終段階の完成品に仕上げるまで一貫生産を行っています。私たちは直営店を持っていますので、自分のところで作って自分のところで売ることができます。しかし、実は同じ業界では、こうした形はほとんど見られません。

一貫生産による直売が御社の強みなのでしょうか。また、社員の平均年齢が相当若いと伺っていますが。

鴻野
同じ業界にはない独自のスタイルのものづくりをしている点が、私たちの強みになっています。お客さまの声を直接受け取ることが出来る環境がより良い製品づくりに活かせています。
それから、ものづくりの世界では、どの業種も職人の高齢化に悩んでいます。ところが、当社の平均年齢は30歳に至っていません。平均年齢の若さは、私たちの業界では考えられないことだと思います。日本各地から若いスタッフが集まってきてくれています。

永く良い状態で使っていただける製品づくりが基本。直営店を中心に情報とサービスを提供。

革の材料はどのようなものが多いのでしょうか。また製品づくりにあたって、どのようなものづくりの理念をお持ちなのでしょうか。

鴻野
牛革を中心にクロコダイル(ワニ)やリザード(とかげ)等のエキゾチックレザーも使用しています。また今一番人気があるのはコードバン(馬のお尻の革)です。
私たちが作る製品は厚手の革を使い、しっかり縫製をして、丁寧に仕上げるのが特徴です。
永く良い状態で使っていただける製品を作ることが、第一の理念です。それは、まず良い材料を探すことから始まります。良い革を選ぶこと、壊れにくい形を考えること、丁寧な仕上げを行うことが必要です。
第二の理念は第一の理念と並行して、永く良い状態で使っていただくための情報やサービスをしっかり提供することです。店頭や当社のホームページで素材の特徴をお知らせしたり、店頭でいつでもメンテナンスさせていただくことで、長い間良い状態でお客さまに使っていただきたいと思っています。
私たちの商品は決して安くはありません。1年や2年で壊れるようなものではなく、少なくとも10年くらいは良い状態でお使いいただきたいと思っています。そのために丈夫な商品を作り、正確な情報やサービスを提供していきたいと考えています。

革製品づくりは素人から始まったというお話がありましたが、御社ならではのものづくりの理念は容易に確立できたのでしょうか。

鴻野
直営店を持ったことによって、新品の商品だけでなく、私たちスタッフが使用してきた製品を見ていただくことができるようになりました。簡単なお手入れによって、より良い状態でお使いいただけるということを、しっかり伝えられるようになったかと思います。その中で、お客さまが経年変化した製品に大きな魅力を感じられているということについても確認することができました。
数年前、当社で雑誌に広告を定期的に出したことがありました。そのとき、お客さまが13年間お使いになられたものをお預かりして撮影し、「これはお客さまが13年間お使いになられたワイルドスワンズです」というコピーをつけて掲載したところ、かなり大きな反響をいただくことができました。

「ワイルドスワンズ」製品はコバ磨きなどにより丁寧な仕上がり。異業種とのコラボ企画に関心。

「ワイルドスワンズ」製品の特徴はどういうところにあるのでしょうか。

鴻野
私たちの商品の最大の特徴は、革の裁断面(コバ)の仕上げにあります。
革の裁断面は表面と異なり、ざらっとした繊維質になります。通常はそこに顔料を塗ることで仕上げていますが、私たちはそのざらっとした繊維をツルツルになるまで磨き上げます。(泥団子をツルツルピカピカにすることと同じです。)顔料仕上げのものは経年によりヒビ割れ剥離したりしますが、私たちの商品のコバはざらつきが出てきた際に、商品に付属するコバ磨きの道具(スリッカー)を使い、擦っていただくことで簡単に元のツルツルの状態に修復できます。

「ワイルドスワンズ」ブランドのお客さまの広がりを感ずるところはありますか。

鴻野
革好きのお客さまが、当社の商品を銀座店などで見て、口コミやSNSにより情報発信していただいているようです。お客さまにとって、知り合いからの情報がやはり説得力があるのではないでしょうか。
国内有名メガネメーカーさんとのコラボレーションによってメガネケースを作らせていただいております。今後も異業種の方とのコラボは当社にとって非常に重要なプロモーションだと考えています。
この仕事を始めて少し経った頃、同業種の方に当社の商品を見てもらう機会があったのですが、「こんな丈夫なものを作ったら、君たちはビジネスとして絶対に成功しないよ。」と言われることがありました。買い替え需要が起こらないからですが、私はそのようには思いませんでした。私たちに商品が1種類しかなければ、確かに買い替え需要は起こらないかもしれませんが、幅広い商品のラインナップがあれば、別の商品を買っていただけるきっかけになるだろうと思っていました。例えば、財布を最初に買っていただいたお客さまが、私たちが作る製品に信頼をおいてくださり、キーケースや名刺入れや鞄を買っていただくこともあるわけです。
ワイルドスワンズ商品『財布』/美しく磨き上げられた革製品

アトリエ完成により、工場見学などお客さまへのおもてなしを準備中。

アトリエが完成されたということですが、何かお考えになっていることがおありでしょうか。

鴻野
4月に落成式を行いました。これからは、お客さまに私たちの製品づくりを見ていただけるように工場見学会をスタートさせたいと考えています。月2回くらいの実施予定です。現在ホームページでご案内しております。全国からお迎えするお客さまのために、ゲストキャビンを設けましたので、お客さまにお茶を飲んで休憩していただいたり、お食事をとっていただけるようにしたいと考えています。また、最寄駅から当社までは少々距離がありますので、当社の送迎車がお迎えに行きエスコートする予定です。
それから、製品づくりには直接結びつきませんが、近くのいちご園の経営者がリタイアされるにあたり、事業の継承をさせていただきました。全国から工場見学においでになるお客さまにいちごのおもてなしができますし、従来からのいちご園のお客さまにもご安心いただけるのではないか、少しでも地元に貢献できるのではないかと思っております。いちごの商品名も地元の地名をとり、「金江津いちご」としました。

財布が売れ筋で直売が伸びる。将来はお客さまの街に出向いていくのが夢。

御社の全体の売上状況はいかがですか。

鈴木 祥順 社長
鴻野
直営店を出すまではOEMの売上と「ワイルドスワンズ」商品の百貨店や専門店への卸売がメインでした。直営店を出店後、現在ではインターネットを含めた直売と卸売とは大体同じくらいです。当社の個別アイテムの中では財布が一番売れています。
昨年秋から、インスタグラムにおいて、全文英文の説明を入れて写真や動画を発信しています。フォロワーは海外の方も多く、実際に海外のショップからのオファーも来ています。

ものづくりの理念は、御社の経営理念と考えてよろしいのでしょうか。また、鴻野社長の将来の夢についてお聞かせください。

ミシンによる縫製作業風景
鴻野
先程お話したものづくりの理念は当社の経営理念です。「永く良い状態で使っていただけるものを作るとともに、そのための情報やサービスを提供していく」ということです。それによりお客さまから信頼を得ることができればと考えています。そして商品の品質、サービスの質を継続的に向上させることによって、唯一無二という評価にまでつなげていければと思っております。
現在、当社では工場見学においでになるお客さまへのおもてなしの準備をしているところですが、将来はアトリエ機能を車に詰め込んで、お客さまがいらっしゃる街にこちらから出向いていきたいという夢があります。そこで、当社の商品のメンテナンスをしたり、製作工程を見ていただいたり、他にも面白いことができるのではないかと考えています。

取材を終えて

河内町の実家の鉄工所跡を利用して、社長の鴻野正好氏は平成6年に兄弟で革製品製造を始めました。事業のアドバイスや指導を貰える人もいない中、全くの独力で一から革製品製造に踏み出したのは、自力でどうしても本物の革製品を作りたいという純粋な思いからでした。

社長のサラリーマン時代の会社からOEMの仕事を受注できた幸運を活かし、オリジナル商品開発のための試作品づくりに注力し、努力の末に平成10年に革製品ブランド「ワイルドスワンズ」を立ち上げました。そして、業界の常識にとらわれない、革を分厚く重ね合わせ丁寧にミシンで縫っていく縫製や、通常の倍の時間をかけた入念なコバ磨きなど、あくまでユーザー目線を貫いた、美しく丈夫で長持ちする革製品を生み出しました。

社長のお話では、素人から始めた試行錯誤が製品の高いオリジナリティを生んだと強調されていましたが、ブランド確立までの道のりは並大抵の苦労ではなかったと思われます。効率を後回しにしても、ユーザーに長く愛される本物を作り上げる、仕上げられた革製品の美しさからは、創業当時からのものづくりに対する徹底したこだわりと強い信念が伝わってくるようでした。

銀座と京都への直営店出店により、SNSでの情報交換と相まってお客さまのニーズを直接汲み取ることが容易になり、お客さまへの情報提供やメンテナンスサービスの充実、更にブランド力の一層の向上に繋がっているとのことでした。毎年直営店の周年記念日には限定品を求め、全国の熱烈な「ワイルドスワンズ」ファンの行列が終日絶えないそうです。

こうしたお客さまの期待に応え、鴻野社長は弟の鴻野弘好アトリエ長と協力して、新築したアトリエ工場見学やいちご農園経営など、ユーザーのおもてなしを通して地元の活性化にも積極的に貢献したいとの意気込みを示されていました。

当社の商品コピーに謳われる「自分らしくなれるもの」をお客さまに提供し、価値あるものづくりに挑戦し続ける、これからの当社の一層の飛躍が確信された取材でした。

鈴木 記

会社概要

本社

有限会社 ケイズファクトリー
代表取締役社長 鴻野 正好

本  社
〒300-1312 茨城県稲敷郡河内町長竿3886
銀 座 店
〒104-0061 東京都中央区銀座2-9-4 アイタワー1F
京 都 店
〒604-8066 京都府京都市中京区御幸町通六角下ル伊勢屋町341-2 末盛ビル1F
電  話
(本社)0297-85-6335
(銀座店)03-3563-5040
(京都店)075-256-8086
業  種
革製品製造販売(1994年より)
従業員数
57名

ウェルカム茨城

県内の企業をご紹介しているウェルカム茨城はこちら

Think&Act

県内の大学や研究機関に在籍する新進気鋭の研究者の研究成果を事業化の視点で紹介します。

ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。

このページのトップ