株式会社染めQテクノロジィ

代表取締役 菱木 貞夫

ナノ技術の応用により、世の中の問題解決に日々挑戦する新技術研究開発企業

人間社会の急激な近代化と技術進歩の陰で環境破壊がもたらされた側面があることは、かなり以前から指摘されてきました。今回は人間に命があるように、「モノにだって命がある」という考え方をベースに、モノが古くなっても壊さずに延命を図る技術を追究してきた企業を紹介します。「ナノ技術」を応用し、防錆、防カビ、防ウイルス_など、「防」をコンセプトにした技術開発を続ける株式会社染めQテクノロジィ(本社:茨城県猿島郡五霞町)の菱木社長に、会社の設立経緯、事業内容、特色、今後の展望についてお聞きしました。

聞き手 弊社社長 茅根務

現社長が60歳を過ぎてから、ナノ化技術開発企業を都内で創業。2010年に社名を変更し、本社も五霞町に移転。

会社の創業・設立の経緯についてお聞かせください。

菱木
2002年、私が米国ネバタ州におけるナノテクノロジー研究で、現在当社の社名となる商品「染めQ」の開発に成功し(株)テロソンコーポレーションを設立しました。それまでもいくつかの事業を手がけてきましたが、時間をかけ米国で研究を重ね蓄積した技術を元に、思い切って60歳を過ぎてから起業しました。
その後、2010年に、社名を現在の(株)染めQテクノロジィに変更し、新本社社屋を茨城県猿島郡五霞町に竣工しました。現在、本社のほか、埼玉県幸手市に工場、岩手県一関市に営業所と工場があり、最近米国ロサンゼルス郊外にも工場を建設しました。

ナノ技術に着目し、それを応用した製品開発に取り組まれていると伺っています。どのような経緯があったのでしょうか。

菱木
当社の技術はモノに密着させるということが核です。物質をナノ化させる研究と以前に開発していた密着させる技術を組み合わせて、その性能を発揮させます。物質にはどんなモノでも特性があります。例えば電極にはN極とS極があり、NとSは引き合いますが、NとNでは反発してしまいます。そのNとNがくっつく様なもの、つまり何にでもくっつく、という事を研究してきた訳です。そして、その密着強度を更に増すためのナノ化技術に挑戦してきました。
私は学者という立場ではありませんでしたが、米国の研究所で働く中で、ヨーロッパや米国の学者と親しくなり、ナノ化技術を勉強しました。

ホームセンターでも「染めQ」ジャンルを確立。「速さ」「品質」「追求」の「Q」を社名に採用。

商品名にも使われている「染めQテクノロジィ」という社名の由来をお聞かせください。

菱木
商品名でもある「染めQ」は広い意味で言えば塗料の一種ですが、私は普通の塗料と差別化するために、新しいコンセプト「染めQ」というジャンルを作りたいという強い想いがありました。当社の商品の特徴は、普通の塗料が「塗る」と表現されるのに対し、当社の「染めQ」は「染める」と言った方が相応しいかと思います。
今ではお陰さまで、どのホームセンターへ行っても塗料という括りではなくて、「染めQ」という括りで販売してもらえるようになりました。
社名の「染めQ」も、初めは染物屋さんと間違えられそうでしたが、仕事の実態を表す「技術研究所」のような堅い社名では面白味もなく、なかなかお客様に覚えてもらえません。それで、「染めQ」という少し特長のある名前と一体化させることによって、多くの人たちに親しんでもらいたい、と考えたのが大きな理由です。

「染めQ」の「Q」は何か謂われがあるのでしょうか。

菱木
「速さ」「Quick」の「Q」、「品質」「Quality」の「Q」、「技術の追求」「Quest」の「Q」という意味があります。「Q」というアルファベットの響きは多くの人に親しんでもらいたいという想いもあり社名に採用しました。今では取引先のみならず、一般の方にもこの五霞本社の会社見学にお越し頂くなど、「染めQ」という名前も知られてきた様に思います。
私も多くの経験をし、60歳を過ぎてから始めた会社なので、会社自体を大きくしたいというよりも、どうしたら世の中の役に立つか、社会の諸問題をどうしたら当社の技術で解決できるか、といったことにこだわっています。具体的には、大量生産・消費の時代を経て、廃棄物をこのまま出し続けてはいけない、エネルギー問題解決に役に立ちたい、高速道路など社会インフラの鉄錆びやコンクリート劣化を延命しよう、感染症問題はウイルスや細菌類とどう闘うか、などです。当社は、こうした大きなテーマを掲げて研究開発を続けてきましたので、会社の事業としての発展はまだまだこれからというところです。

世の中の社会問題に合わせて、その解決のための新製品を開発。すべての素材への塗布が可能な「染めQ」や「カビ封じ」等のヒット商品を生む。

「染めQ」シリーズの開発の流れはどういう流れだったのでしょうか。

菱木 貞夫 社長
菱木
2002年、ちょうど私が会社立上げの頃、廃棄物処分が社会問題になりました。地球環境汚染の進行が予想されることから、ゴミの分別が緊喫の課題となっていました。中でも、高度成長期に造られた建造物、高速道路等の社会インフラの劣化は、廃棄物だけではなく、社会の安全面を脅かす問題となってきました。元々モノにだって命がある、古い物を大事にしよう、という考え方を会社の想いとしておりましたので、この社会問題は我々技術を研究する者の課題だと考えてきました。そういう背景から、錆びの発生を抑え延命化する、コンクリートの劣化を抑え、より強度を持たせる、ということが、(株)染めQテクノロジィの技術の原点にあります。
その他、カビ菌による食中毒や2010年頃の新型インフルエンザウイルス等、全国で猛威を振るったことがあり、防カビ剤やウイルス環境対策商品を作りました。また、東日本大震災後のエネルギー問題を受け、消費電力を抑えるには空調効率を上げる事が必要と考え、窓、屋根、壁等を遮熱できる商品を開発しました。窓については更に紫外線から守り、明るさを遮らない性能を持つ遮熱コーティングができます。
当社はこれら世の中が直面するその時々の問題解決を、またこれから起こるであろう問題をテーマとして、技術開発に取り組み、新たな商品を生み出してきました。ですから、一つ一つの商品にはひと言では言い表せない思い入れがあります。
(株)染めQテクノロジィ様のケミカル製品/(株)染めQテクノロジィ様の日雑製品

御社は数多くの商品を世に出しておりますが、いくつか主な商品について、セールスポイントをお聞かせください。

菱木
2005年に「染めQ」を開発し、販売をスタートしました。塗料は、一般的に木材は木材用、金属は金属用というように、素材により使い分けが必要です。当社が開発した「染めQ」は木材であれ、金属であれ、皮革でも、布でも、紙でも何でも塗れてしまう製品です。「塗る」というより、「染める」といった方がわかりやすいかと思います。しかも、元の風合いを壊さずに、まるで染めたように仕上がるので、古くなり捨てるしかなかったモノでも、「染めQ」によって新品同様に復元が可能となりました。
防錆効果と同様、カビ対策に効果的な商品に「カビ封じ」という商品があります。カビ対策には塩素系の薬剤を使用することが多く、人間の身体に害があって、これまで安心して使えませんでした。しかもそれらは耐性菌を作り出してしまう為、更に害のある薬剤が生れるという繰り返しをしています。しかし、当社の「カビ封じ」は非塩素系で素手で触っても安全であり、カビを殺すのではなく、カビを寄せ付けないので耐性菌を作る事はなく、人にもカビにも優しい商品です。

厨房床補強剤事業で「めぶきビジネスアワード」優秀賞を受賞。作業効率の改善と大幅なコストカットを実現。

第1回めぶきビジネスアワードで優秀賞を受賞された「驚異的強度」「超コストカット」を実現した厨房床補強剤事業についてお聞かせください。

菱木
レストラン、ホテル、給食センター、老健施設の厨房や食品工場等においては、絶えず水や油を使うために、厨房床が劣化していきます。酷いところではコンクリート内の石がむき出しになってデコボコになる程の劣化が進んでいるところが多い状況です。そのまま放置しておくと、常に汚れが溜まったままの状態になり、雑菌等が発生して食中毒発生の恐れがあります。食中毒が発生すると、たちまち保健所から営業停止処分を受けるとともに、事業者にとって後々まで響く大きなダメージを受けることになってしまいます。
厨房は1日3食絶えず稼働しています。そのため、お客さまからのご要望は、夜の営業終了後から翌朝までの6~7時間程度ですべての補修工事を完了してほしいと言われます。これまで、通常、工事に3~5日間かかるので、事業者は二の足を踏み、補修工事をズルズルと先延ばしにしてきたケースが多くありました。それをお客様のご要望どおり、6~7時間程度で工事完了が可能になったのが、染めQ商品を使った補修工事です。
普通の塗料は、床に水や油があったら塗ることさえできません。例え塗ってもすぐに剥がれてしまいますから、誰もが塗装は不可能と考えていました。しかし当社で開発した「床塗料」は水があっても、油があっても剥がれないと分かると、自動車生産工場など工場床において高い評価をいただき、採用になる企業が順調に増えました。ところが施工したレストラン厨房床で剥がれる、という苦情が出てくるようになりました。その後何件ものトラブルにより大きな損失を出すことになりました。
しかし、そのお陰で商品の改良を重ねることができ、完成したのが『どんな厨房床でも』という商品です。今回の受賞はこの当社オリジナルの厨房床補強剤『どんな厨房床でも』による事業です。水や油で劣化し割れ、デコボコの厨房床でも一晩で直せます。物性的な強度が非常に高く、塗装のプロでなくても作業できる作業効率の良さで、大きなコストカットが可能となるものです。
本件の補修工事は、当社施工部で研修を受けた「染めQステーション」という協力企業にお願いしています。現在全国に120社程ありますが、お互いパートナーとして、厨房床補強剤事業を進めていきたいと考えています。

「するな3ヶ条」により、自主性と責任を重視。3か年の中期計画により、社会の要請に応えていく。

技術開発にはさまざまなご苦労があったと思いますが、人材育成について特に気をつけておられることはございますか。

菱木
特に何もしていません。社員には説教しないし、親切に教えることもしません。気を遣わないとどうしても喋りたくなりますので、喋らないようにいつも気を遣っています。(笑)
よく言えば、自主性を持たせているということでしょうか。まず、「自分で考えてみなさい」と言っています。そこで自分の意見があるなら、アドバイスをすることはあります。あとはなるべく放任主義をとっています。
当社には、「するな3ヶ条」というものがあります。一、説教するな。教えるな。」、二、「否定語からスタートするな。」です。「できない」「知らない」「わからない」は禁句。否定語の使用を禁止しています。三、「響きのいいアイマイ語で誤魔化すな。」です。「すいません」「反省しています」は何か失敗や間違いを糊塗するような言葉で、こうした曖昧語も禁止です。

売上目標や販売計画、あるいは事業計画についてお聞かせください。

菱木
当社は、これまで、こうしようとか、この部分を伸ばそう、ということは一切してきませんでした。社員が自由にやってきたら、たまたま現在のようになったように思います。それで、昨年初めて、期限を決めてやっていこう、ということで3か年の中期計画を立てました。
先程も話しましたように、建築・土木関係で錆びを止める、コンクリートの劣化を止めるというのが老朽化物件に対する社会的要請になっています。私たちには、従来解決できなかったことを解決できる技術があります。例えばトンネルの崩落を、堤防の決壊を止められる可能性があります。とても大きなテーマですが、大手の取引先からも、従来の錆びを止めるペイントと比べて次元が違う製品という評価をいただいています。

3つの経営理念により、さまざまな矛盾を解決しながら、社員には悔いのない人生を送ってほしい。

御社の経営理念についてお聞かせください。

菱木
三つあります。一つは、「人生の感動を創造する」です。お金や地位、名誉も大事ですが、それよりも、一番大事なのはエキサイティングな人生、感動するような人生だと思います。染めQという会社を舞台にして面白い人生を送ってほしいと思います。二つ目は、「社会の明日を科学する」です。自分だけの満足ではなく、誰かのため、社会のために役立てようということです。三つ目は、「感謝の日々を体現する」です。感謝によって人の気持ちを動かすことができたら、また何か新たなものを生み出す原動力となると考えています。

菱木社長が日頃大切にされている想いについてお聞かせください。

菱木
質問に対する答えにはなっていないかもしれませんが、私は、「生きて行くということは色々な矛盾の解決だ」と思っています。一度きりの人生ですし、社員には大きなテーマで悔いのない人生を送ってもらいたいと思います。そのためには、日常が大切ですし、一方では日常から離れて大胆なことを考えるのも大切になります。社員にはいろいろな問題を投げかけています。

働きやすい職場づくりで多くの女性社員が活躍。お客さまの困っていることに日々向き合っていく。

会社のオフィスを拝見し、多くの女性の方がご活躍されているという印象があるのですが、商品開発分野など、何か狙いがあるのでしょうか。

菱木
男性、女性の性別で何か優遇しているようなことは一切ありません。また特に何か狙いがあるわけではなく、現在、会社全体では女性より男性社員の方が多いですが、幹部社員は女性の方が多いという状況です。また、役員の半数以上は女性ですし、課長・部長クラスも女性が中心になっています。
当社では、結婚、出産、子育て世代の若い人たちが働きやすいよう本人の希望に合わせて時短を推進しています。また、埼玉県のウーマノミクスプロジェクトにも参加していますので、そうしたことが女性にとって働きやすい職場と感じてくれているのかな、と思っています。女性が時短を望むのは出産子育て中であり、人生で考えたら僅かな時間です。ですから業務時間は本人の希望を尊重しますが、業務そのものは優遇も差別もないのです。それから、年齢差別はするなよと、社員にもよく言うのですが、これは私自身のために言っているようなものでしょうか。(笑)

御社が今抱えているような課題はございますか。

菱木
改めて課題は何か、というより毎日のように課題が生まれてきます。その多くが製品等に関する用法に関することで、お客様から、「こういうことで困っているのだが、染めQさん、どうしたらいいか?」とほぼ毎日問合せがあります。日々課題だらけといった状況です。私どもに期待を寄せてくれているということですから、本当に有難いと思っています。

高まる海外需要に対応し、米国に工場進出。2019年にはシンガポールにも工場新設予定。

御社の海外展開についてお聞かせください。

茅根 務 社長
菱木
最近、米国のロサンゼルス郊外に工場を作りました。海外での販売は商社を通して行います。
当初国内だけでも大きな市場が見込めるので、海外進出は考えていませんでしたが、商社から熱心な奨めもあり、海外進出を決断しました。
既に香港での仕事も受注しておりますが、2018年にはシンガポールに現地法人を設立し、2019年から防錆剤の製造工場を新設して稼働させる予定です。石油タンクや大型タンカーなどの塗装や補修の需要が高いと見込んでおり、新工場で生産した製品は東南アジア全域やオセアニア、中東など幅広く出荷する予定です。

地域の活性化にも貢献。「染めQ不思議ワールド」に積極的に見学者を受け入れるとともに、来年はミュージアム化も計画。

地域とはどのような関わりを持っているのでしょうか。

菱木
現在、「染めQ不思議ワールド」という無料で見学や塗装体験ができる施設を本社内に設け、取引先は元より、地域住民の方々の生涯学習の場として、または子供や学生さんたちの社会見学の場として、随時、会社見学を受け入れています。年間約2,000人の方々に体験いただいていますが、遠方からも高校の総合学習授業や旅行のツアーでお越しいただいくこともあります。
また地元五霞町のイベントには積極的に参加しています。「五霞ふれあい祭り」や「五霞ウキウキフェスタ」への参加や、町活性化のための有識者会議等への参加などを行っています。
遠方にも「Qキャラバン」という鮮やかなラッピングカーで出向き、ホームセンター等で染めQ体験教室を行うこともあります。

御社で何かPRしたいことがございましたら、お聞かせください。

菱木
お近くにおいでの際は、是非当社にお立ち寄りください。「染めQ不思議ワールド」を見て触って楽しんで、当社を知っていただく機会になればと思います。現在の「染めQ不思議ワールド」は日々進化していますが、まだまだ不十分です。来年は新たな建物を作り、ミュージアム化したいと考えています。より多くの方に当社を知るだけでなく、現在の社会問題を知り、将来を担う子供達の勉強の場になればと思います。

取材を終えて

60歳を過ぎてから創業した菱木貞夫氏はナノ技術を応用した商品開発に挑戦し、防錆、防カビなど近代化した人間社会共通の諸問題の解決に貢献してきました。2005年に開発した商品は「染めQ」という商品ジャンルを世に生み出し、素材による使い分けが基本的に不要な塗料である、「塗る」感覚でない「染める」感覚の商品を数々生み出してきました。

そして、レストランやホテル、食品工場等の厨房床の補修工事を短時間で可能にした補強剤も、作業効率向上によるコストカットを可能にし、事業者の悩み解決に大きな衝撃をもたらしています。

菱木社長は「するな3ヶ条」により自主性と責任を重視し、社員一人ひとりの人生が経営理念にあるように、エキサイティングで感動の人生であってほしいという願いを込めています。また、それは同時に社会にも目を向けて、豊かな個人生活と豊かな社会を創造したいという菱木社長の強い想いを感じました。

当社は社員の能力を最大限発揮する会社づくりを目指し、女性にとっても働きやすい職場を実現してきました。これからの海外進出へ期待が膨らむ一方で、地域に溶け込む地道な貢献活動を行いながら、子供達を含めて会社を知ってもらうための見学者の積極的な受け入れなど、年輪を経ても絶えず未来を夢見る菱木社長の眼差しが印象的な取材でした。

茅根 記

会社概要

本社

株式会社 染めQテクノロジィ
代表取締役 菱木 貞夫

本  社
〒306-0313 茨城県猿島郡五霞町元栗橋5971
電  話
0280-80-0005(代)、0120-229-309(フリーダイヤル)
※不思議ワールド見学のご希望の方は事前にご連絡ください
国内工場
〒340-0121 埼玉県幸手市上吉羽2100-79(登記上本店所在地)
〒029-0521 岩手県一関市大東町渋民続石39-17(営業所併設)
設  立
2002年2月
資 本 金
5,000万円
業  種
新技術研究開発
従 業 員
77名

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